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フィリップ・クリスチャン（リバプール）　コーヒーカップ（1770-75年頃）
A Philip Christian (Liverpool) Coffee Cup C.1770-75

　リバプール磁器窯の一つ、フィリップ・クリスチャンによるコーヒーカップ。やや下膨れの胴体にシンプルなループハンドルが組み合わされている。

　クリスチャン窯は、その前身であるリチャード・チャファーズ(Richard Chaffers)窯と同様、ウースターと同じソープロックを用いた軟質磁器を製造した（チャファーズ窯には、クリスチャンも経営者の一人として参画していた他、ウースター出身のロバート・ポドモア(Robert Podmore)が参加して磁器製造の技術を伝えた）。装飾面でも、ウースターからの影響がかなり見られる。

　本品の装飾は、青いうろこ(スケール・ブルー：scale blue)の地模様の上に、金のスクロール枠で囲まれた大小の白地パネルが配され、その中に花絵が描かれたものである。スケール・ブルー地はウースターのお家芸であるが（ウースター(W12)及びウースター(W17)を参照）、ウースターのスケール・ブルーが染付（釉薬の下にコバルト顔料で描いたもの）であるのに対して、クリスチャンのスケール・ブルーは上絵（釉薬の上に青いエナメルで描いたもの）である点が大きな特徴である。クリスチャンでも染付による地模様は用いられているが、スケール・ブルーに関しては染付ではうまくいかなかったのではないかと考えられている。

　また、口縁の内側に施された金彩も、斜めの短いストロークを連続させた、特徴的なものである。

マーク：なし
Marks: None

高さ(H)：5.8cm

参照文献/References：
- Maurice Hillis "Liverpool Porcelain 1756-1804" p.229 and figure 6.15
- Sotheby's website： https://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2014/arts-europe-l14301/lot.191.html
- V&A Museum website： https://collections.vam.ac.uk/item/O278605/plate-philip-christian/

（2021年2月掲載）